大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京高等裁判所 昭和55年(ラ)691号・昭55年(ラ)697号・昭55年(ラ)684号 決定

右事実によれば、本件農地の競落人李命喜は、本件競買の申出に際し、千葉県知事の交付にかかる農地競買適格証明書を有していたのみならず、右競買の申出後競落許可決定前に、同県知事から、前記のとおりの条件が付せられているとはいえ、本件農地につき農地法三条による所有権移転の許可をも得ていたのであるから、本件競売は前記の特別売却条件を具備し適法なものであるということができる。けだし、一般に農地の競売につき前記のような特別売却条件の付せられる理由は、農地が営農の適格性を有しない者に競落されてその農業上の効率的な利用が妨げられるなど、農地法の目的を阻害する事態の発生することを防止するにあると解されるのであるが、競売の申出をなす者がその競売の対象農地につき営農の適格性即ち競買の適格性を有するか否かの判断をなす権限は農地法三条及び五条等に定める行政庁(本件農地の場合は千葉県知事)にあるのであるから、最高価競買人に対し、右権限を有する行政庁において、当該農地について競買の適格性ありと判断して、競買適格証明書を交付したうえ、更に同法三条による所有権移転をも許可した本件のような場合、競売裁判所としては、右行政庁の判断にこれを無効と解すべき重大かつ明白な瑕疵が認められない限り、これを尊重して、右最高価競買人に対し競落の許可をなすべきものであって、右行政庁の判断があるにもかかわらず、競売裁判所において独自に競買の適格性の有無を審究し、その判断に従って競落の許可、不許可を決するがごときは、前記農地法の趣旨に反することになるからである。

抗告人らは、李命喜の居住地、職業及び経歴並びに債権者李九烈との身分関係などを挙げて、李命喜には本件農地につき競買の適格性はない旨主張するが、たとえ李命喜の居住地、職業及び経歴並びに債権者李九烈との身分関係が抗告人ら主張のとおりであるとしても、千葉県知事においては、李命喜に対し営農計画書を提出させるなどして、同人の営農の意思、計画を確認し、厳重な条件を付して本件農地の所有権移転を許可したこと前記のとおりであるから、右事実に鑑みれば、同県知事の前記判断には重大かつ明白な瑕疵があるとすることはできない。

従って、本件農地の競落を許可した原決定には所論の違法はないといわなければならない。

(杉田 中村 松岡)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!